肺癌に対するCT検査の有用性に疑問
愛煙家にとってCT検査は時に肺癌(がん)の早期発見に役立つが、全生存率には何ら影響を及ぼさないばかりか、医療費の増大を招くとともに、患者の不安を募らせ、場合によっては不必要な手術を施行させていることが、医学誌「Radiology」4月号掲載の研究で明らかにされた。
米メイヨークリニック(ミネソタ州)内科教授のJames Jett博士らは、1日1箱の喫煙量で、少なくとも20年間の喫煙歴のある健康な50歳以上の男女1,520例を対象に,CT検査を年1回、4年間にわたり実施した。その結果、CT検査で癌が疑われたリンパ節(nodule)3,356のうち、実際に癌性であったのはわずか68であり、試験参加者の69%が少なくとも1回偽陽性の診断を受けていた。また、13例が計15件の手術を受けたが、手術施行後に良性腫瘍であることが判明した。
Jett博士は「早期に癌を検出することができれば死亡率の低下が期待されるが、今回の試験結果はその期待に答えるものではなかった」と述べる。CT検査による早期癌の検出率は増大したが、後期(進行)癌の検出件数は依然として、1970年代に胸部X線撮影を用いて行われたMayo Lung Projectとほぼ同じであった。早期に発見された癌が、進行性のものか否か判別できないのが現状である。
米国肺協会(ALA)のNorman H. Edelman氏は「治癒が可能な早期の段階で癌を検出できる状況に実際に移行していたのであれば、後期癌の発見件数は減少しているはずである」と指摘する。
無症候性のすべての癌にCT検査を行う是非については、未だ見解の一致をみていない。米国立癌研究所(NCI)は現在、肺癌診断におけるCT検査と胸部X線検査による死亡率の差の有無を検討するために大規模無作為化試験を実施している。