カロリー制限が長寿もたらす
カロリー制限がなぜ寿命を延ばすのか? アカゲザルでの研究が、この疑問に対する手がかりを与えてくれそうだ。米国科学アカデミー発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences」12月11日号オンライン版に掲載された研究で、カロリー摂取量の制限により、感染症に対抗する主要な免疫細胞が強化されることが明らかになった。
研究者で米オレゴン健康科学大学(OHSU)ワクチン・遺伝子治療研究所の Janko Nikolich-Zugich博士らは、18〜23歳のアカゲザルを用いて研究を行った。28匹に標準食を、13匹に30%低カロリーの制限食を与えた結果、標準食群に比較してカロリー制限群でT細胞の維持・産生能が向上した。アカゲザルの平均寿命は25年で、ヒトに換算すると60〜70歳に相当する。
研究者は、ヒトは加齢に伴い、感染症に対する免疫システムが弱くなるが、免疫反応に重要な役割を果たすT細胞は、加齢に最も影響される免疫系の細胞の一つだと説明する。研究では、カロリー制限がT細胞の機能を向上、炎症性物質の産生を軽減させることが明らかになった。このことは、カロリー制限が免疫機能の老化を遅らせ、感染症への長期抵抗力を維持することにより、結果的に寿命を延ばすことを意味している。
Nikolich-Zugich博士は、カロリー摂取量を制限する人では、免疫系がより優れてかつ強いことから、長生きする可能性があるという。同博士はまた、免疫システムを向上させるカロリー制限を模した薬剤開発も可能であることを示唆する。
米南カリフォルニア大学老年学研究準教授のTodd E. Morgan氏は「これらの研究結果は、カロリー制限による有益な効果は、抗炎症作用によってもたらされるという証拠のさらなる裏づけになる」と述べ、次の重要なステップは、カロリー制限による抗炎症作用の分子的機能を解明することだとしている。