人種により肺癌(がん)発症率に差
肺癌(がん)にならないためには、たばこを吸わないことに越したことはないが、喫煙による肺癌の発症率は人種的にも大きな差のあることが、米Southern California Keck大学医学部(ロサンゼルス)予防医学助教授のChristopher Haiman氏らの研究によって明らかにされ、米医学誌「New England Journal of Medicine」1月26日号に掲載された。
1日10〜20本の喫煙者で比較すると、黒人、ハワイ先住民では白人に比べ肺癌の発症リスクは30〜40%高く、最もリスクの低いラテン系および日系アメリカ人では、白人に比べ20%、黒人に比べ60%低かった。
Haiman氏らは、肺癌発症率の人種差が喫煙量の違いにあるとする学説を検証するために、1993〜2001年に黒人、白人、ラテン系アメリカ人、日系アメリカ人およびハワイ先住民の男女合計18万3,813例を対象に実施された多民族コホート研究のデータを収集し分析した。
8年の研究期間中に、に1,979例が肺癌を発症。喫煙率は黒人、ハワイ先住民、ラテン系アメリカ人、白人、日系アメリカ人の順で高かった。ただし女性ではラテン系アメリカ人よりも白人のほうが高かった。
総合的にみて、白人、ラテン系アメリカ人および日系アメリカ人はハワイ先住民や黒人よりも、肺癌発症率が有意に低かった、喫煙量でみると、1日あたり31本を超えるまでは発症率の差はほぼ同じであったが、このポイントを境にグループ間の差は平坦化し始めた。
Haiman氏は「喫煙量が低いと発症率の差がより著しくなるが、いずれの差においても統計学的に有意差が認められた」という。同氏は、人種差が認められる原因として、遺伝子レベルでの喫煙によるニコチンなどの化学物質の代謝方法に違いがあるか、煙を深く吸い込むなど喫煙の様式に民族グループ差があるのではないかとみている。
米カルフォルニア大学ヒト遺伝学研究所所長のNeil Risch氏は「人種や民族性が重要となる場合もあるが、肺癌はある特定のグループに限られたものではなく、誰でも喫煙をやめる必要がある」と述べている。