高齢者での運動効果を左右する遺伝子
運動により得られる有益性が低い高齢者が存在する理由を説明する、遺伝的形質が明らかにされた。その遺伝子とは、血圧制御に関与するアンジオテンシン変換酵素(ACE)を抑制する遺伝子の異型。米ウェイク・フォレスト大学医学部老年学教授のStephen B. Kritchevsky氏らによる研究結果が、米国医師会誌「JAMA」8月10日号に掲載された。
これまでに英国の研究で、この異型の遺伝子が軍入隊者の身体的反応に悪影響を及ぼしていることが明らかにされていた。今回、Kritchevsky氏らは、「健康老化および体組成を評価するコホート試験(Health Aging and Body Composition Cohort Study)」に参加した高齢者3,000例以上を対象に、遺伝子検査を実施した。
1997年当時70〜79歳であった高齢者に、運動のみならず階段の昇降や歩行など日常生活の活動について周期的に報告してもらった。さらに、身体の動きに関して何らかの問題があれば併せて報告してもらった。
その結果、遺伝子によってACE産生が最低値に抑えられている高齢者は、高値を示す高齢者と比べて、階段の昇降または400メートル歩行に困難が生じる割合が45%以上高かった。
「活力ある高齢化に関する国際協議会(International Council on Active Aging)最高責任者のColin Milner氏は「10〜20年後には、運動施設でDNAを抽出し、個々の運動のプログラムが計算されることになるかもしれない」と推測する。一方、Kritchevsky氏はその時代に至るまでの道のりは長いとの見解を示しており、今回の試験は「未だ予備的研究段階で、さらなる裏づけが必要であり、現時点では運動することに尽きる」と述べている。